季節を越え、時を越え…地域に寄り添い、想いを繋ぐ

椿花山武蔵寺 住職 井上 隆照さん

今回のインタビュー

椿花山武蔵寺 住職
井上 隆照さん

第91代住職。元中学校長、九州西教区議会元議長、天台宗布教師、朝日カルチャーセンター講師

筑紫一帯を見守り続けるお地蔵さま

 天拝山の麓にある武蔵寺は、大化5(649)年、初代大宰の帥(そち)として赴任した蘇我日向臣無耶志(そがのひむかのおみむさし、後の藤原虎麿)の建立と伝わり、『今昔物語集』や『梁塵秘抄(りょうじんひしょう)』にもその名が記される、九州最古の歴史あるお寺です。

 訪れる人をお迎えするのは門前のお地蔵さま。

 武蔵寺とお地蔵さまの関わりは深く、毎年旧暦10月15日には「地蔵会」を行います。これは筑前国一帯を治めた藤原虎麿が亡くなる際、「地蔵の化身となってこの地を守ってきた」と言い残したことが由来です。この地蔵会は徐々に地域の人々が加わる行事となり、千年以上にわたって受け継がれてきました。

仏教の「心」の字をかたどった心字池(しんじいけ)と茶室が境内に静かな趣を添える

「おかげさま」という気持ちが1300年以上の歴史を繋ぐ

 長い歴史の中で、武蔵寺は建武3(1336)年の菊池氏と少弐氏の戦い、さらに天正14(1586)年の岩屋城の戦いによって、二度焼失しましたが再建。武蔵寺は人々の心の拠り所であり、地域の精神的な支えでもありましたので、再建は地域復興の証となったのです。

 二度の焼失を乗り越え、1300年以上にわたり当寺が続いてきた背景には、薬師さまに救われたと感じた筑紫の人々が「おかげさま」という気持ちで力を合わせて再建に尽くしてくれたおかげだと思います。

樹齢1300年とも言われる「長者の藤」(筑紫野市指定天然記念物)。
毎年4月の第3日曜日から1週間「藤まつり」を開催
俗世と仏国土(清浄な神仏の領域)を結ぶ太鼓橋。
水を渡ることで心身を清める意味がある

心と身体を癒やす薬師さまの教え

 「きれいな花にはトゲがある」と言いますが、見方を変えれば、トゲのあるものにも美しい花は咲きます。仏の慈悲は、全ての人は生まれながらに仏になれる(仏性がある)と考え、善悪を分け隔てることなく、すべての人を救おうとするものです。

 薬師如来さまの功徳には、身体だけでなく、苦悩や迷いといった心の病を癒やすことも含まれています。つまり人は心身ともに健やかであることが大切ということ。そして、草や木にも同じ命があります。だからこそ、人は自然の中に身を置いたとき、心地よさや楽しさを感じ、穏やかな心を取り戻せるのではないでしょうか。落ち着いたその心からは、自然と良い言葉や考えが生まれてくるものです。

 春には藤が、秋には紅葉が当寺を美しく彩ってくれます。山や自然は、古来より人々が敬い、ともに歩んできた存在です。天拝山や公園の自然に触れ、穏やかな時間を過ごしながら、あわせて武蔵寺の薬師さまにもお参りいただければと思います。

天拝山山頂から望む筑紫野市街。武蔵寺は、菅原道真が無実を天に訴えるため幾度も登り、天を拝したと伝わる天拝山の登山口に位置する

秋の筑紫路で、自然、歴史、音楽、アートを楽しむ2日間です。

〈 問い合わせ 〉

天台宗 武蔵寺
住/筑紫野市大字武蔵621
☎/(092)922-2670

関連記事